持ち家に潜むカントリーリスク

カントリーリスクとは

カントリーリスクとは何でしょうか。

Wikipediaによると、その定義は

海外投融資や貿易を行う際、対象国の政治・経済・社会環境の変化のために、個別事業相手が持つ商業リスクとは無関係に収益を損なう危険の度合い。

となっています。

この定義を見ると、カントリーリスクは海外資産に投資する時にしか気にする必要は無いように見えるかもしれません。

しかし、これは国と国との相対的な関係によって発生するリスクですので、日本の資産に投資する場合でも、世界的な観点から見ればカントリーリスクは存在します。

その内容は、

  • 経済情勢の変化(例:国家財政のデフォルト、インフレ)
  • 政治情勢の変化(例:内乱、革命、政情不安)
  • 国の政策変更(例:為替政策、外資規制)
  • 社会的要因(例:政治家や公務員の腐敗、宗教対立)
  • 自然災害(例:地震、ハリケーン)

など、多岐にわたります。

日本資産のカントリーリスク

上の例を見て日本の資産で一番のカントリーリスクは何かと考えると、「地震大国」と呼ばれるその立地上、「地震」ではないかと思われるかもしれません。

確かに「地震」は日本の資産、特に土地と直接結びついている家を買うに当たっては大きなリスクです。

しかし遭遇する可能性の大きさで考えると、今の日本の資産にはより大きなカントリーリスクが存在します。

「円安」というカントリーリスク

それは、日本の資産のベースになっている通貨「円」そのものの価値が下落するリスク、すわわち「円安」です。

奇しくも、一昨日の記事円急伸をリアルタイムで見ていたで書きました日銀黒田総裁の発言に端を発する騒動では、「円安」とは逆方向の「円高」の状況が発生しました。

しかし、その後に発行されたニュースなどを見ると、

黒田発言なければ現実化した近未来、懸念は管理不能な円安 | Reuters
「まさか」が現実になる超円安1ドル=150円 まっ青になる会社と業界  | 経済の死角 | 現代ビジネス

など、今後の「円安」を懸念するものが多くあります。黒田総裁の発言には、こういう今以上の「円安」の進行をけん制する狙いもあったものと思われます。

しかし、いずれ実施される予定の米国の利上げのことなども考えますと、今後は更なる「円安」方向への圧力が強まることが予想されます。

無意識に日本円に偏ったポートフォリを持つ危険性

ここまで考えた時、自分の資産で日本円に偏ったポートフォリを形成することは、それ自体がリスクであることにお気づきになられましたでしょうか?

そして持ち家を買うことはそれを投資と意識していなくても、自分が生涯で投資できる資産のうちのかなりの部分を日本ローカルの1不動産に集中投資するということですので、当然「円安」リスクを伴います。

もちろん、手持ちの資産全てを日本の定期預金で持っているような場合も、同様に「円安」リスクを背負うことになりますが。

持ち家を勧める人の中にはそれがインフレ対策になることを強調する方もおられますが、これからの日本では円ベースで資産防衛に成功したとしても、世界から見れば「円安」で資産が目減りしていたということも十分起こりえるのです。

資源や食料の大半を輸入に依存している日本でそうなった場合、当然それは物価高となって家計を直撃します。

つまり、円高・デフレの時代ならば通用した安全性を求めて円ベースの資産で身を固めるという手法は、これからは必ずしも安全とはいえないのです。

インフレ対策については家を買わなくても、株式などの資産に投資することでも行えます。更にそのような一般的な投資ならば、投資先を日本と世界に分散することで「円安」リスクへの対策も同時に行うことができます。

これはらは円高?それとも円安?

さて、ここで質問です。これからの日本は以前のような円高に戻る可能性と、今後更に円安が進む可能性、どちらの方が高いとお考えでしょうか?

更なる円安を予想する方か、少なくともどちらになるかわからない(円高になるか円安になるか五分五分)と考える方は、日本資産への集中投資ではなく日本と世界の資産への分散投資を考える方が合理的です。

持ち家の購入を考えている方も、今その日本円ベースの資産への集中投資に踏み切ることが妥当なのかどうか、契約書にサインする前に今一度考えてみることをお勧めします。

スポンサーリンク

フォローする

おすすめトピック(一部広告あり)

おすすめトピック(一部広告あり)


『持ち家に潜むカントリーリスク』へのコメント

  1. 名前:horizon 投稿日:2015/06/13(土) 01:26:11 ID:f1895fe08 返信

    持ち家に天災以外のカントリーリスクは考慮するべき項目なのでしょうか。

    資産は殆ど円預金の人に対してなら、持ち家のカントリーリスクを言っても仕方ないことで、それよりも外国の不動産でも外国株でも外貨でも薦めるべきです。
    カントリーリスクを言うなら、勤務先の株などリスク集中になるので、持つべきではないというの話にも派生してくるのではないでしょうか。

    また、私はホームバイアスで国内株が多いですが、輸出関連企業は円安になれば株価が上がる場合も多いです。
    アベノミクスの時期は、国内REITなど米国ドルよりも値上がりしていたりするのではないでしょうか。
    円安だから海外からの不動産投資が増えてマンションが値上がりしているという話も聞きます。
    円安になれば為替の変動ほどは上回らないかもしれませんが、不動産の値上がり要因にはなると思います。

    • 名前:観楓 投稿日:2015/06/13(土) 07:18:56 ID:4995107ca 返信

      horizonさん、コメントありがとうございます。

      この話はホートフォリオが円ベースの資産に偏っている人全般に言えることですが、持ち家を持っている人は自分の資産が円ベースに偏っていることを意識されていない場合が多いので、あえて挙げさせていただきました。

      円安が資産価値に間接的に与える影響については、対象によって様々ですので個別に判断してもらうしかないですね。

      円ベースの資産であっても、円安の進行に従って為替レートの変化と同程度値上がりすることがほぼ確実な資産であれば、円安のカントリーリスクは無いと判断してもいいでしょう。

      しかし一般に個人が住居用に買う物件については、そこまでの為替レートとの連動性があることは稀なように思います。

  2. 名前:きのこ 投稿日:2015/08/11(火) 00:10:54 ID:749cbc975 返信

    一つ疑問に思ったのですが、

    例えば今ドル円100円として
    1000万の家を買ったとして
    2年後に120円になった(円安になった)として
    同じスペックの家が1200万になったとしたら
    1000万で1200万のものを買ったことになるので
    少なくともただの円預金するよりは円安対策ではないのか?
    と思ったのですが、何か考え方が間違っているのでしょうか?
    為替が120円になっても家は1200万にはならないのでしょうか?

    • 名前:観楓 投稿日:2015/08/13(木) 12:38:20 ID:554541b71 返信

      きのこさん、コメントありがとうございます。

      円安になることによって海外からの不動産投資が増え、不動産が値上がりする可能性はあると思います。

      しかし投資用物件ではなく一般人が実際の住居として購入する物件は、為替レートに比例するほど値上がりはしないのではないかと個人的には思っています(投資用物件も不動産バブルが去ればどうなるかわかりません)。

      他の色々な要因も絡みますので、結局住居購入に円安リスクがあると見るかどうかも人それぞれの相場観ということになりますね。

      ただ極端に円のみに偏った資産構成はそれ自体がリスクと成りうるということは、頭の片隅に置いておいて損は無いと思います。