昨日、2年前納も含めた国民年金の支払い方法比較で2年前納がお得という記事を書きました。しかしその後よく考えてみると、2つほど疑問点が浮かんできましたので、それについて調べてみました。
社会保険料控除はどうなるのか?
2年前納した年に支払った全額が控除されるのかと思っていたのですが、どうもそうではないようです。
詳細は以下の国税庁のページに書いてありますが、前納した金額を課税対象の年内に到来する納付期限の回数で按分して控除対象とするようです。
国税庁:法第74条《社会保険料控除》及び第75条《小規模企業共済等掛金控除》関係
文章にするとややこしいですが、要は2年前納の場合、毎年1年分ずつ保険料が控除されるということですね。
したがって、収入が多い年を見計らって前納しないと損をする、などと心配する必要はなさそうです(逆に言うと、前納する時期で控除額の大小を調整することはできません→追記2参照)。
追記)(2014/01/20)
コメントで、前納した金額の全額を前納した日の属する年分の控除対象とする方法についてご指摘をいただきました。現状、私にはそれが有効なのか判断できませんでしたので、コメントもご参照のうえ各人判断をお願いします。
追記2)(2014/01/23)
本件について日本年金機構の国民年金保険料専用ダイヤルに聞いた結果を記事にしました。2年前納について国民年金保険料専用ダイヤルに聞いてみたをご参照ください。
2年目で保険料が変わるとどうなるのか?
国民年金の保険料は毎年微妙に変動するので、この点も気になります。こちらについてはネットを調べても確かな情報が見つかりませんでしたので、年金事務所に電話して聞いてみました。
その結果、2年目で保険料の変動があっても、その分の追加徴収や差額の払い戻しはしない、ということでした。したがって、2年目で保険料が上がると得、下がると損をすることになります。
参考までに直近10年の国民年金保険料(月額)の変遷を見ると以下のようになっています(日本年金機構:国民年金保険料の変遷より)。
- 平成16年:13,300円 (前年比±0円)
- 平成17年:13,580円 (前年比+280円)
- 平成18年:13,860円 (前年比+280円)
- 平成19年:14,100円 (前年比+240円)
- 平成20年:14,410円 (前年比+310円)
- 平成21年:14,660円 (前年比+250円)
- 平成22年:15,100円 (前年比+440円)
- 平成23年:15,020円 (前年比-80円)
- 平成24年:14,980円 (前年比-40円)
- 平成25年:15,040円 (前年比+60円)
この国民年金保険料は以下のような計算式で決められています(日本年金機構:国民年金保険料の額は、どのようにして決まるのか?より)。
- 国民年金保険料 = 平成16年度の改正で決められた保険料額 × (※)保険料改定率
- (※)保険料改定率 = 前年度保険料改定率 × 名目賃金変動率
過去10年を見ても保険料が下がった年は10年中2年しかありませんし、その減少額も最大で月額80円です。また、保険料計算式のベースとなっている「平成16年度の改正で決められた保険料額」は、平成29年まで毎年280円ずつ上がっていくことが決められています。
以上のことから、2年前納しても保険料の減少で損をする可能性はかなり低いものと思われます。
追記)(2014/01/20)
こちらについてもコメントで、「来年2月に保険料値上げの場合は、2年前納した人にも追加で値上げ分を請求する」可能性があるとのご指摘をいただきました。これについても、コメントをご参照のうえ各人判断をお願いします。
追記2)(2014/01/23)
本件についても日本年金機構の国民年金保険料専用ダイヤルに聞いてみました。2年前納について国民年金保険料専用ダイヤルに聞いてみたをご参照ください。
追記3) (2014/02/05)
2年前納の保険料が発表され、2年目の保険料が1年目の金額ベースではないことがわかりましたので、情報を更新した記事を作成しました。国民年金の支払い方法比較 平成26年版をご参照ください。
以上の調査により、個人的には2年前納をしてもデメリットを被る可能性は低いと判断しましたので、本日申し込み書を投函してきました。
それにしても自分は最近 物を調べる時ネットに頼りがちですが、疑問点のポイントが明確で問い合わせ先の窓口もはっきりしている場合は、電話などで直接聞いたほうがよほど早いですね。やはり固定観念にとらわれず、頭は柔軟に保っておかないといけません。
国民年金保険料2年前納の場合の社会保険料控除については、国税料のHPに、
①前納した金額を課税対象の年内に到来する納付期日(通達には、「納付期日」という文言で書かれています)の回数で按分して控除対象とする方法(所得税基本通達74・75-1)以外に、
②その前納した金額の全額を、前納した日の属する年分の控除対象とする方法(同74・75-2)が記されています。なお、旧74・75-2にあった「1年以内」の文言は既に改正されて、国民年金保険料2年前納に対応した規定に変わっています。
他方、国民年金保険料を2年前納した後に(例えば来年2月に)27年度分保険料が値上げされた場合の問題は、かなり微妙です。国民年金法施行令8条の2には、「前納した後に保険料が値上げされたら、前納保険料は、先に到来する月分の保険料から順次充当する」旨の規定があります。同条が改正されて「2年前納の場合はこれを適用しない」とでもされない限りは、年金事務所は法令に従った年金行政をする権限しかありませんから、後で不足分(平成28年3月分保険料について発生)を請求する義務が生じます。
既に2年前納の受付が始まっているのに国民年金法施行令8条の2がまだ改正されていないところをみると、国や年金事務所は「来年2月に保険料値上げの場合は、2年前納した人にも追加で値上げ分を請求する」可能性がある、と考えざるを得ません。