遅れてきたパナソニックの成果主義

以下の日経新聞の記事を読みました。

パナソニック、年功廃止 賃金制度10年ぶり見直し  :日本経済新聞

パナソニックが今ごろになって年功序列を廃止し、成果を重視した賃金制度の導入に踏み切るみたいですね。

なぜいまさらの成果主義?

今回の改革のポイントを挙げてみると

  • 年齢に応じて給与が上昇する年功要素を廃止
  • 担当する役割の大きさに応じて賃金を決める「役割等級制度」を導入
  • 部課長制を復活させ、権限と責任を明確化
  • 全社員を対象に成果を重視

といったことのようです。

若手社員も責任のある役割に積極的に登用し、成果に応じた報酬によって社員全体のやる気を引き出すということのようですが、記事を読んでいる限りでは個人的には嫌な予感しかしません。

だいたい、この記事の段階ですでに「管理職ら非組合員の総人件費が1割以上減る」「総人件費も数%減る」というような見通しが示されているのはどういうことなのでしょうか。これでは上記のような前向きの目標はただの飾りであり、実態は人件費削減が目的であると思われても仕方がありません。

過去の失敗に学べるか

それに、日本では今までに成果主義を導入してきた企業で大成功したという例はあまり聞きません。むしろ有名な富士通の例を筆頭として、失敗した企業で死屍累々という状況です。

今回のパナソニックの改革のポイントを見ても、役割等級に応じて賃金を決めるということですが、その役割等級に求められる仕事内容を明確に定義できるのか?、また全社員を対象に成果を重視するということですが、仕事内容が千差万別の全社員の成果を公平に評価する仕組みが準備できるのか?、など運用面での難問が山積しているはずです。

今までの日本の成果主義導入企業はこのような問題に真正面から取り組もうとせず、形だけの制度を作ってあとの運用はろくに教育もしていない現場に丸投げしたため、社員の納得感が得られずに士気の低下を招いて失敗しているわけです。

実際、自分が勤めていた会社にも成果主義が導入されていましたが、役職の等級が下がったのに今まで以上の成果を求められ、それが達成できないと更に等級を下げると言われたり、会社の上層部が勝手に評価を決めるので現場のマネージャーが評価の根拠をまともに担当者にフィードバックできない、というような事例を見てきました。

このような状況では、短期的には人件費削減で利益が上がるかもしれませんが、長期的には人材の育生が阻害され、会社は衰退していく可能性が高いです。

今回はパナソニックに加えてソニーも年功要素を排した賃金制度の導入を検討しているようですが、業績低迷に悩む電機大手が前例を破って実のある成果主義を運用し、見事に業績回復を果たすのか、それとも今までの企業と同じように形式的な運用で目先の人件費を削減するものの、長期的には更なる衰退の道をたどるのか、少し長い目で今後の推移に注目したいと思います。

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