「持ち家が良いか、賃貸が良いか」というのは家に関する永遠のテーマですが、最近持ち家派の方のブログで少し議論をしました。
場所は以下の3つの記事のコメント欄で、お相手はブログ主の方とそこにコメントに来られた方の2名、共に全力で持ち家推しの方々です。
「持家」と「賃貸」を比べると「持家」が得に決まってるよね。
自己資金0で無借金の不動産を手に入れる方法
結局、賃貸が損なのはホテル住まいのサービス無しヴァージョンだからだよね。
人様のブログで暴れるだけというのも不公正かと思い、自分のブログでも書いてみることにしました(他人のブログでいくら議論しても一銭の得にもならないというスケベ心も少し有り)。
以下、持ち家派の方々の主張で気になった点と、それに対する自分の見解について書いていきます。
値下がりリスクについて
暴落してもタダ同然にはならない
タダ同然にはならないかもしれませんが、どのくらいの期間でどのくらい下がるかという定量的なことを考えないと意味がありませんよね。
ヤフー不動産などで築35年の物件を調べてみてもゼロに近い値段では売られていない
同上
昔の安普請の築50年以上の木造住宅でもリフォームもせずに現役でいくらでも存在する
全体的な傾向を見ないで特定の事例だけの話をしても意味がありません。
欧州ではほとんどが中古物件
欧州は日本と民族性も気候・風土もぜんぜん違いますので、その例を持ち出すのは無理があります。
むしろ日本の話をしているのにその例を持ち出したくなるのは、日本の中古物件の立場の弱さを暗黙のうちに意識しているからではありませんか。
住み替えリスクについて
持ち家だって売るか貸せばいいのだから自由に住み替えられる
持ち家は希望する時期に希望する価格で買い手や借り手がつかない可能性が確実に存在しますので、賃貸と同じほど自由とは言いがたいです。
持ち家を手放す場合は、本来は売ったり貸したりするつもりではなかった物件を最適ではないタイミングで手放すことになる場合が多いです。そのことのリスクを見落とすか過小評価していませんか。
手放す場合のリスクは賃貸需要の高いエリアにする、適正価格にするなど事前に準備しておけば防げる
持ち家を手放す場合のリスクは、物件の目利きなどの事前準備だけでは完全には防げません。
事前の準備で完全に損失を防げるなら、不動産投資で失敗する人はいないはずです。
天災リスクについて
交通事故死するよりも低い確率の事まで考える事はあまり意味が無い
家にダメージを与える可能性のある天災は地震・津波だけに限らず、台風・洪水・土砂崩れ・地盤沈下・大雪・火山噴火など多岐にわたります。
また大は原発事故から小はシロアリまで、天災以外の要因も存在します。
それら全てを考慮した時、遭遇する確率は本当にそれほど低いですか?更に、遭うか遭わないかの二択ではなく、アベレージとしてどのくらいのコストが発生するかという定量的な観点も必要かと思います。
あと、確率は低くても天災で家を失ったり大損害を被る人は確実に発生しますので、人生設計を左右しかねない一生で最大級の買い物をするにあたっては、万一それに当ってしまった時に人生が詰まないかは考慮しておく必要があると思います。
耐震基準を満たした鉄骨鉄筋コンクリートが津波で流される、地震で倒壊するということは考えにくい
地震や津波の直撃を受けても大きな損傷を受けずそのまま住み続けられるような家が、本当に想定している賃貸より有利な安値で買えますか。
また自分の家だけが生き残ったとしても、回りが大損害を被っていれば生活環境が著しく悪化する可能性もあります。
ひどい天災の場合は賃貸だって生死の問題がでてくる
家の問題と人の生き死にの問題は別です。家の話をしているのにそれを持ち出すのは、賃貸を天災リスクに無理やり巻き込むためのこじつけのように思われます。
その他
賃料にはあらゆる事前に想定される経費・リスクと貸主の利益が上乗せされているので、絶対に賃貸のほうが損をする
賃貸業にも競争というものが存在しますので、どんな事態が発生しても絶対に損をしないほど家賃を好き勝手に設定できるわけではありません。
もしそれほど絶対的に貸す側に有利な価格設定で経営が成り立つならば、賃貸業に失敗して撤退する人はいないはずです。
しかし実際に賃貸業をしたことがある人なら、同業者に負けないためにぎりぎりの家賃設定を迫られることが多く、状況によっては望む利益が得られなくなって撤退を余儀なくされる可能性があることを実感されていると思います。
このように、その地域で賃貸業をする人が一人しかいないというような特殊な状況でもない限り、賃料の決定権を持っているオーナーといえども、一方的にリスクの全てを借り手に押し付けるような真似はできません。
つまりオーナーもリスクを負うことになりますので、借り手が絶対に損をするという仮説は成り立ちません。
実際に自分は成功している
そのことは今まであまた持ち家を買った人の中に一人の成功者がいる、ということ以上の意味を持ちません。
町内のおじちゃんおばちゃんも成功している
今持ち家を買って資産形成に成功している老人が家を買った時代とこれからの時代とでは、社会・経済情勢が全く違います。
時代背景の変化をかえりみず「おじちゃんが若い時にこの方法で成功したから、俺もこれから同じことを全力で真似しよう」と突っ走るのはかなり危険です。
賃貸でメンテナンスや修理費用がかからないのは家賃にそのコストが乗っているためなので、それは賃貸のメリットではない
これはある意味その通りです。でもそれをもって賃貸のメリットでないと言うなら、賃貸に比べて金銭的コストが安いという持ち家のメリットを語るときにも、メンテナンスや修理費用は自腹になるので表面的なコスト差からその分は差し引いて考える必要がある、ということもしっかり言わないとフェアではありません。
また想定した以上の修理費用がかかるような事態が発生した場合には、家賃に上乗せした修理費では間に合わずに家主の持ち出しになるような場合も有り得ると思います。
今回の議論の感想
今回の議論を通して感じたのは、持ち家派の人には「自分は家を買っても大丈夫だった」という成功体験がすごく強いバイアスとして働いているのではないかということです。
そういう意味では家を買ったことがない自分には若干逆方向のバイアスがかかっているのかもしれませんが、極力客観的な判断をするように心がけているつもりです。
今回はたまたま持ち家全力推しの人との議論でしたので自分は賃貸派のように見えるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
持ち家にも賃貸にもメリット・デメリットが有りますので、各々を見極めて自分に合った方を選べばよい、というのが自分のスタンスです。
持ち家には税金面での優遇なども有り、以下の条件が満たされる限りは有利な選択だと思います。
- 途中で手放さない
- 天災などで大ダメージを受けない
- 不動産相場が大幅に下落しない
- ローンの返済が破綻しない
しかしこれらの条件のいくつかが崩れた時には、それなりの(場合によっては相当の)リスクが顕在化すると思われます。
少なくとも住居に関して、どんな状況でも絶対に賃貸より損をしない万能の銀の弾ではありません。
追記)2015/05/16
持ち家派の方と十分には語り合えなかった不動産相場の変動リスクということに関する考察記事を追加で作成しました。
→持ち家は一点集中投資、賃貸は長期分散投資
→持ち家のローンを払い終えれば確実に資産が手に入るという幻想
>昔の安普請の築50年以上の木造住宅でもリフォームもせずに現役でいくらでも存在する
そんな家に住みたいかと言う素朴な疑問が。私なら小奇麗な賃貸に引っ越したいけど、そんな家の処分は難儀しそうです。