先日持ち家・賃貸問題で話題の記事で山崎元さんが書かれた以下の記事のことをご紹介しました。
持ち家が得か、賃貸が得か―― この難題に、ひとつの答えを出そう | 山崎元「ニュースの深層」 | 現代ビジネス
この記事はネット上でもかなり話題になりましたので、持ち家派の方も無視できなかったのか、いくつかのブログでこの記事に対する反論が書かれていました。
今日はその内容について見てみます。
反論1:住宅ローンを組むのはハイレバレッジではない?
こちらの方が反論しているのは以下の部分のようです。
仮に、2000万円の自己資金があって、6000万円のマンションを買う場合、3倍のレバレッジを掛けて長期間にわたる信用取引をするようなリスク・テイクとなる。少なくとも、リスクの取り方として上手いやり方ではない。
ハイレバレッジではない根拠は「住宅ローンは実物資産に裏付けされているので、時価相場が上下にアップダウンしてもそれを以て直ちに強制ロスカットや市場から退出にはならない」からだとか。
しかし上の引用の例でいうと、6000万円で買ったマンションの価格が1/3下落しただけで自己資金2000万円分全ての資産価値を失います。実際にはもっと頭金の少ない人も多いわけで、FXのような強制ロスカットや追証が無いからといって、レバレッジをかけたことのリスクが無くなるわけではありません。
これをいうとまた「物件をちゃんと選べば大幅に価格が下落することはない」と言われるのかもしれませんが、住宅購入のような長期間に渡る集中投資で価格下落の可能性を全く考慮に入れないのは、一般的な資産運用スタンスとは思えません。
ご自分自身は「頭金ゼロでローン組んでますが、そのことによって危険と感じたことはありません」とおっしゃっていますが、その感覚ははたして他人とも共有できる一般的なものでしょうか?
反論2:マンション相場のリスクを推測するのにJ-REITを引き合いに出すのは不適切?
こちらの方は噛み付いたのは以下の部分と思われます。
あれこれの事情を考慮すると、個別の不動産物件に対して、標準偏差では9%の倍の18%くらい、せめて15%くらいのリスクを見ておきたい。
他方、内外株式へのインデックス投資だとリスクが18%程度で、期待リターンが金利プラス5%見込めるとするなら、金融資産への投資の方がリスクとリターンの効率が良かろう。
ここで山崎元さんはマンション相場のリスク-リターンを推定するためにJ-REITの取引価格実績を使用しているわけですが、それが不適切だと言われているようです。
その根拠としてこの方は、東証REIT指数と東京都の住宅地平均価格の推移のグラフを示し、REIT指数のボラティリティが高いのに対して、住宅地平均価格は比較的平坦であることを指摘しています。
しかしちょっと待って下さい。不動産物件に投資するJ-REIT全体の動きを示す東証REIT指数と比較する対象がなぜ土地だけの価格である「住宅地平均価格」なのでしょう?しかもなぜ「東京都」だけのデータなのでしょうか?
この方は最初に「比較できないものを引用するのは賃貸派の常套手段」と書かれていますが、その直後の自説の説明で見事に自分自身にブーメランを投げられておられるという面白い展開を見せていただきました。
またこの方は、「様々な方面から比較検討してシミュレーションもしたりして出来得る限りリスクを低減するようにしながら敢えて積極的に不動産で財産形成を図る」ともおっしゃっています。
しかし、以前に私がある大学教授が行った人口減少による住宅価格下落のシミュレーション結果をコメント欄で提示した時、この方は「将来の不動産相場がシミュレーションで予知出来る訳が無いという事が何故お解りになられないのでしょうか?そんな事が出来る人間がいれば世界中の富を独占出来ますよw」と切って捨てられました。
どうも色んな所でブーメランを投げまくっておられるようです。他人のシミュレーションは信用出来ないが、自分がするシミュレーションは信用できるということなのでしょうかね。
以上、持ち家派の方の反論のサンプルを見てきました。
今回の山崎元さんの記事は論点がかなり整理されていましたので、持ち家派の方からも骨のある反論が見られるかと期待していましたが、残念ながら私が見た限りではそういうものは見当たりませんでした。
もちろん有名な経済評論家や大学教授の言うことだからといって、全てを鵜呑みにする必要はありません。
しかし、反論するなら自分の経験や過去の統計・実績を持ち出すだけではなく、もう少し論理的な根拠に基づいた納得感のある反論を期待したいところです。