ネットを観ていて、以下の記事が目に止まりました。
リコー、社員“島流し”訴訟で敗訴、退職強要の実態露呈~大企業の追い出し部屋に一石 | ビジネスジャーナル
リコーの強引な人員削減策で出向になった社員2名が、出向の無効や身体的・精神的苦痛に対する慰謝料を求めていた「島流し訴訟」と呼ばれる裁判で、出向無効を言い渡す原告勝訴の判決が出たとのこと。
訴えた社員のうちの一人は技術者で、リコー社内で100件以上の登録特許を取得したほどの人だそうです。にもかかわらず希望退職への応募を断ったところ、個人の机もない物流関係の関連会社に出向になり、荷物の梱包や運搬という畑違いの肉体労働に従事することになったという。
会社からすれば、ちゃんと給料は払っているのだから問題ないでしょうと言いたいのでしょうが、本音は早く音を上げて自主退職してくれということでしょう。
これに対して、判決文には以下のように書いているという。
「本件出向命令は、事業内製化による固定費の削減を目的とするものとはいい難く、人選の合理性(対象人数、人選基準、人選目的等)を認めることもできない。したがって、原告らの人選基準の一つとされた人事評価の是非を検討するまでもなく、本件出向命令は、人事権の濫用で無効というほかない。この点に関する被告の主張は採用できない」
解雇という明確な形を取らない限り、グレーゾーンである配置転換や出向なら会社の意向で自由にできると考え、口では「リストラではない」と言いながら「追い出し部屋」や「島流し」を駆使して強引な人員削減を進めてきた企業に対して、司法が「No」を突きつけた判決といえるでしょう。
私も以前の記事「日本の社員は守られているのか?」で配置転換や成果主義を悪用した賃金カット、遠隔地への異動などを使って社員を自主退職に追い込む会社の手口を書きましたが、こういうことは多くの会社で行われています。
今回の判決はそういう風潮に歯止めをかけた実例として、今後同じような境遇に苦しむ会社員の希望の光になるでしょう。
ただし、個人である会社員と法人である会社では、知識的にも資金的にも大きな差があります。今回の裁判でも東京管理職ユニオンが支援していたようですが、個人が会社と戦うためには、地域の役所や労働組合と共闘していくことが一番の道だと思います。
今、実際に同じような苦境に立たされている方がいれば、とりあえず相談できる役所や労働組合を探して下さい。相談するだけなら、失うのは自分の僅かな時間だけです。その結果、会社と争うことに気が進まなければ、そこで打ち切ることもできます。
少なくとも、泣き寝入りして会社から言われるままに異動したり辞表を書いたりすること以外にも選択肢があることを心に留めておいて下さい(自分も会社を辞める前にこのニュースを観ていたら、今とはまた違った道があったかもしれない、とふと思うのでした)。