今日のこのお話も、先日から書いています
持ち家は一点集中投資、賃貸は長期分散投資
持ち家のローンを払い終えれば確実に資産が手に入るという幻想
と本質的には同じことを言っています。
しかしあることを理解するのに、それを様々な角度から見つめ直してみるのは有効な手段ですので、今日もまた別の視点から書いてみたいと思います。
持ち家と賃貸の本質的違い
持ち家派の人はよく
- 持ち家は一定期間でローンを支払ってしまえば資産が手に入るので安心
- 賃貸は一生家賃を払い続けなければならないので不安
というようなことを主張されますが、これは両者の違いの本質を捉えた発言ではありません。
いきなり結論を書きますが、持ち家と賃貸の本質的な違いは「買う」という選択をするかしないかです。
より具体的にいうと、「今の値段で買って使う」という選択をするのが持ち家であり、「買わずに使った分だけ時価で支払う」という選択をするのが賃貸です。
つまり、使うものの価格を最初の段階で固定してしまうのかしないのか、というのが違いの本質なのです。
ジュースを例にして考えてみる
何を当たり前のことを言っているのだと思われるかもしれませんので、ここからは例を使って説明します。
1日1本の冷えたジュースを100日間飲み続ける、という行為について考えます。
前金でまとめて買う人(=持ち家派)
ある人は100本のジュースをまとめて買ってきて冷蔵庫に保管し、1日1本ずつ飲もうとするでしょう。
これが持ち家派の考え方です。飲んで毎日1本ずつ減っていくジュースが家の経年劣化に相当します。
他の事にお金を使い過ぎて後でジュースを買うお金が無くなる、という心配をしなくていい点では良い方法です。
ただし、買ったジュースをずっと飲める状態で保管するために冷蔵庫の電気代などのコストがかかります。これが家でいうと修理・リフォームなどの維持費に相当します。
また思いがけない停電などが発生し、買っておいたジュースがダメになってしまうかもしれません。これが家で言うところの天災リスクです。
毎日1本ずつ買ってくる人(=賃貸派)
一方、毎日お店で冷えたジュースを1本ずつ買ってくればいいと考える人もいます。これが賃貸派の考え方です。
これならジュースを保管・冷却するコストやダメになるリスクを背負わなくて済みます。
ただし、冷えたジュースを1本ずつバラで買うのは、100本まとめて買って自分で冷やす場合より割高になることが多いです。これが賃貸派が負うべき手数料(=家賃に上乗せされた維持費、大家の利益など)に相当します。
ジュースの価格変動の影響
100日間ジュースの値段が変わらなければ話は以上で終了なのですが、途中でジュースの値段が変わるとまた別の影響が発生します。
ジュースが値下がりした場合
まず、ジュースの値段が途中で下がった場合について考えてみます。
話を単純にするために、維持費・天災リスク・手数料などの影響は価格変動の影響に比べて小さいので無視できるものとします。
仮にジュースの最初の値段が100円で、飲み始めてから半分の50日が経過した時点で50円に値下がりしたとしましょう。
持ち家派の人は最初に100本分の料金
- 100円 ✕ 100本 = 10,000円
を支払ってしまっていますので、この値下がりの恩恵を受けることができません。
しかし賃貸派の人はまだ後半のジュースを買っていませんので総支払額が
- 100円 ✕ 50本 + 50円 ✕ 50本 = 7,500円
となり、当初の想定より安い値段でジュースが飲めることになります。
持ち家派の人が「たとえ物件の値段が暴落しても資産は手元に残るから大丈夫」と言っているのは、この例で50日後に50本のジュースが残っているから問題無い、と言っているのと同じことです。
しかし手元に残っている50本のジュースの価値は半分に下がっていますので、純然たる含み損を抱えた状態であり、賃貸と比べて損な状況に追い込まれているのは上記の総支払額の差を見ても明らかです。
ジュースが値上がりした場合
一方、ジュースの値段が飲み始めてから50日後に150円に値上がりした場合は当然話が逆転します。
この場合、持ち家派の人の総支払額は
- 100円 ✕ 100本 = 10,000円
のままですが、賃貸派の人の総支払額は
- 100円 ✕ 50本 + 150円 ✕ 50本 = 12,500円
となり、当初の想定より割高の支払いをしなければなりません。
この場合には、持ち家派の人が持っている後半分50本のジュースに含み益が発生していることになります。
こういう状況になった時には、持ち家派の人は最初にまとめ買いすることを選んだ自分の先見の明を思う存分自慢してください。
重要なのは今が買い時なのかどうか
以上の例を見てもおわかりのように、買った瞬間に価格が確定してしまう持ち家を買うにあたって重要なのは、
- その物件の値段は今買い時なのか?
という判断です。
経年劣化による値下がりの影響を除いたとき、その物件が今後値上がりするか少なくとも値下がりしないと思うなら、買うという選択はありです(ただし天災リスクがあることは留意しておいてください)。
逆に値下がりすると思うなら、少なくとも金銭的には買うのは得策ではありません。
上がるか下がるかわからないと思うなら、せめて「ローンが終われば資産が手に入る」とか「家賃をずっと払い続けるのは不安」というような根拠の無いイメージに引きづられて買うのだけは止めておきましょう。
そいういう表面的なイメージだけで家を買うのは、買ったその大切な家をサイコロの目に賭けているのと同じことです。
以前の記事を拝見した後、リンク先のブログを拝見したら、なるほど反論したくなるなあと頷けました。
結局、賃貸が極端に有利とか、持ち家が極端に有利とかは無いということですよね。
日本では人口減なので住宅地の価格が下落傾向になるだろうという見通しはありますが。
ローンで住宅を買うというのは、ローンの金利の分でコストがかかります。
但し、住宅ローン減税で軽減されます。
一方で、賃貸は、大家さんの利益分のコストがかかります。
但し、損をしている大家さんもいます。
今が買い時とか割安とかは判断が難しいですが、ジュースでも家でも、ローンではなく、軽々と現金一括で買えるお金があるならば(1億円の現金があって2000万円の家を買うならば)、分散投資でのポートフォリオの1つという考え方が適用できますし、ローンのコストも大家さんのコストもカットできるので、家を買うなら現金一括払いが得になる見込みが高そうです。